約7年間担当させて頂いたAくんが、30年の人生を駆け抜けて、夏のはじめに旅立っていきました。
生まれつきの難病を抱えたAくん。Aくんが幼いときにお父さんは他界、お母さんとおじいちゃんとでAくんを支え続けました。
病状が進み呼吸器管理になってからも、車椅子に呼吸器や酸素を積んで、好きなアイドルの握手会に出かけるなど、度々外出を楽しむ生活を送りました。制限のある中でも懸命に活動し、それを家族は全力で支え続け、しっかりと駆け抜けた30年間でした。
Aくんの母の味はバナナ春巻き。子供の頃、友達が家に遊びに来ると、お母さんが作ってよくおやつに出していたとのこと。Aくんの他界後、お線香をあげさせてもらいに伺ったときお母さんにその話を聞きました。私はバナナ春巻きを食べてみたくなり、お母さんに作り方を教えてもらいました。春巻きの皮にシナモンシュガーを振りかけたバナナを巻いてカラリと上げます。
早速週末に作って息子とA君の話をしながら、揚げたてのバナナ春巻きを味わいました。皮はパリッとしていて、中はトロッと甘く、それはそれはおいしいおやつでした。
息子もとても気に入ったようで、また作ってねとねだられています。
色々な方の担当をさせて頂く中で、こちらは支援させて頂く側ですが、教えて頂くこともさせて頂く経験も大きく、与えて頂くものの大きさをとても感じます。人間関係は相互関係で、それは支援者と患者様も同じ。
Aくんの母の味であったバナナ春巻きは、息子の母の味にもなりそうです。
(ご家族の了解を頂いて掲載しています。)